社会学と歴史学

着眼点は素晴らしく、かねがね気になる「歴史」と｢社会学」の方法の差異、ウェーバーの歴史学的な社会学と、歴史学の差異など、気になることが、歴史学者の側から語られているところが面白かった。実際には、差異を言うより、それぞれの長所を交流さすべきだというのが著者の視点。著者は社会学に造詣が深く、専門の分野での実力を考えると博学は驚くべきものがある。ただ、少しがっかりしたのは、著者は、かなり哲学的な視点が弱い人で、人間の意識の問題、認識の問題、実在性の問題については、かなり無頓着なために、結局、社会学的諸概念を歴史に導入して語って見せる傾向が強く、本当の意味での｢歴史学と社会学」については、語りえていないと思う。もっというと、本業の歴史学に関する、著者自身の哲学的な視点が掘り下げが弱く、結果、｢個別性」と｢普遍性」、「客観性」と「歴史や社会学を語る立場」などについては、どうも、ウェーバー以上の掘り下げさえもないような気がする。カントからヘーゲルに至る歴史思想については、言及が乏しいが、著者の弱いところでもあり如上の物足りなさにつながっていると思う。わたしは、似たような問題意識の間の差異、たとえば、ウェーバーとコリングウッドの差異を突き詰めることが「歴史学と社会学」｢個別性と普遍性」の問題に抵触するような気がするし、日本の津田左右吉の歴論集に描かれる個別性の問題など、このテーマでは残されていることが多いような気がする。