内部被曝 (扶桑社新書)

ペトカウ効果の説明がかなり詳細に書かれています。原著を知らないのでここで書かれていることしかわかりませんが、肥田氏の解説である程度誤解が解けました。ペトカウ効果の結果は単なる癌の発症の増加ということではないこと。また低線量で影響が大きいというのは、低線量での影響が上に凸であるという意味で、かつ低線量の放射線でのみ発生する医学的影響（水酸遊離基OHによる細胞膜破壊）があるという意味である。そのまま被曝の線量が上がれば、癌の発生率は上昇します。単位線量あたりでみると低線量での影響が一番大きいということです。ちなみにwikipediaでペトカウ氏の実験は高線量であるということが書かれていましたが、肥田氏の解説を読む限り、高線量なのは線源の単位時間辺りの放射線量であり、実験そのものは総量の被曝量（35シーベルト対7ミリシーベルト）を比較しているだけなので、特に問題ないのではないかと思いました。そういうことから考えると、被曝の線量と癌の発生率は直線的に比例するというLNT仮説とは、直接的には矛盾していないように思えます。ペトカウ氏自身の主張はよくわかりませんが、ペトカウ効果といわれるものの実態は、通常言われている放射線の影響以外の影響が、低線量の領域で起きるという意見になりそうです。ただ、ペトカウ氏の実験から影響を受けているらしいスターングラス氏の考えが、肥田氏の記述だけをみるかぎり、癌の発生リスクも低線量域で上昇するという意見のようなので、そこはもしかするとニュアンスの違いになっているのかもしれません。自分自身の意見としては、程度はよくわかりませんが、低線量の放射線によるフリーラジカルの影響はあるかもしれないと思います。ホルミシス効果があるという意見の近藤宗平氏の「人は放射線になぜ弱いか」でも、体内でのベータ線などはイオン化=電離の連鎖が100億倍になるなどど書かれているので、生体は本来的には放射線に弱いと思います。エイズなどの発生に原発などの放射線が関係しているという話は、他の医学者などを説得することは困難です。学力低下と原発実験の統計上の相関というのも、相関関係が実際に高かったとしても実際に医学的な因果関係があるとは言えないので、説得力はありません。広島での被曝者の急性被曝の惨状は、とても参考になりました。目や口から血を出して死んでいくというのは、当時の眼科医も何が起きているかわからなかったそうですが、今でもよくわからないのではないでしょうか。